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聖なるペルーの旅


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2001.9.27〜2001.10.10


10月 7日
 身体は、全身麻酔を打たれて、まだ覚めていないような鈍い感覚だった。意識のほうは、はっきりとしてきたものの、トイレに行こうと思っても、まだ自分一人の力では立つことも出来なかった。エハンに支えてもらって、ようやく立ったが、今度は歩くことが出来ない。抱きかかえるように支えてもらって、何とか部屋の外に出ることが出来た。

 水を飲むと身体が戻ってくるような気がして、持ってきてもらった。ゆっくり一口飲んだが、しばらくしてまた吐いてしまった。やはりまだ早かったようだ。身体中がまだ痺れている。その頃には、他のメンバーは起き上がり、自分たちのロッジに帰って行った。
 横になって毛布を掛けてもらい、その後しばらくの間は眠ることが出来た。そして、そこで朝を迎えた。

 目覚めると、隣には柾至が寝ていた。その横には、K.M さんもいた。明るくなった部屋を見渡すと、昨夜の生々しい跡が残っていた。何と柾至は、一度も吐くこともなく、朝まで熟睡していたようだ。あんな状況の中で、信じられない(・o・) 彼は、昨夜どんなことが起こっていたのか、何も知らなかったのだ。でも良かった、ほっとした。彼がクスコに着いてすぐに、熱を出して嘔吐していたのは、身体が先に準備をしていたからだとわかった。さもないと、二人同時に起こったのでは、あの夜の私にはどうすることも出来なかったから。宇宙の大いなる愛に感謝した。一方、私は塞がっていた片方の耳が治っていることに気がついた。(あのとき耳が塞がって、時々音を立てて衝撃を受けていたのも、気圧や気候の変化に身体がいち早く反応し、バランスを取ろうとした為だったのだ。) 

 朝食のときに、みんなで集まってシェアをした。それぞれに吐いたり、下痢をしたりと、いろいろあったようだ。他にもビジョンを見た人もいれば、時間が経っても変化がなかなか起こらなかった人もいたようだった。(飲んで40分以上経っても、変化のない人は、もう一度飲むことになっていた) M.Y さんは、儀式中は良く眠っていたようだったが、何と今朝起きてみると眼鏡なしで見えるようになっていた!(ブラボー!) みんなも、柾至が一度も吐くこともなく、朝まで熟睡していたことを聞いて驚いていた。私はあの間、日本語で話しているエハンに英語で答え、水を頼むときはスペイン語で「アグア・アグア」と言っていたそうだ(笑)。 思考回路も普通ではなかったみたい(^^; そして、あのとき聞こえていた美しい女性の歌声は、マーサだったことがわかった。(マーサはシンガーの勉強中) シャーマンも唄っていたらしく、シャカシャカの音は、バナナの葉を振っていたそうだ。そうすると、より深く入って行くらしい。

 午前中は、それぞれにリラックスタイム。私もまだ身体がだるかったので、ハンモックに横になったりと、ゆっくりと過ごした。ランチはビュッフェだったが、まあその食べ物のおいしいこと!ビーツを始め、色取り取りのお野菜がいっぱい。温野菜にマイルドでほんのり甘いお豆のカレーもあり、味付けも程よく、私はお替りもしてパクパクと食べた。バナナの蒸し焼きは、焼いもみたいで、ついつい食べ過ぎてしまった。デザートには、イチゴのムース。柾至も気に入って、食べれなかった人の分まで頂いて、やっぱりパクパク。(^^) このアマゾンで、こんなにおいしい食事が出来るとは、うれしいな♪

 午後は、モニカの案内でジャングル探検へ。カヌーで森の中へと入った。動物たちは、私たちがジャングルに入ったことを知っていると言っていた。樹が茂っているが、やはり蒸し暑い。歩くとまだ身体がフラフラしていた。いろいろな形の樹に、鳥やアリ、蜂の巣がある。どれも大きくて迫力。中でも、1年で5cm太陽に向かって動くと言われているウオーキングツリー(下の1枚目の写真)や、アマゾンで一番大きなケポックの樹が印象的で、他の樹に支配されて中が空洞になっていたフィグツリーの中にも入ってみたりした。湖に戻ると、私たちのカヌーの間に、ワニの子供がいた!まるで、私たちが来るのを待っていたかのように・・・。柾至はもちろん、みんなも大喜びで、クラッカーをあげたりして、しばらく一緒に遊んだ。大人のワニは6mはあるそうだ。良かった、子供で(^^)。他にも湖の中には、ピラニアがいた。エハンとマーサは前回来たときに、そのことを知らなくて、この湖で泳いでいたそうだ!? ロッジに戻る頃には、また雨が降り出し、遠くに雷も鳴っていた。








 汗でびっしょりになった身体に、冷たいシャワーを浴びて一休み。今夜は軽く食べておこうということで、スープにパンプキンとチーズのクリームライス。これが、またおいしくて・・・♪(今日の最後の幸せなひと時 ^^) 部屋に戻って、儀式の準備。昨日は何もわからない状態で受けたが、今回は・・・。それだけにドキドキする。

 1日目は、インカトレールと同じで登竜門のようなものだと聞いていた。では、今日の2日目は!?それを考えてしまうと・・・。 実は、今朝から急に咳が出始めて、1日中コンコン咳き込んでいた。次第に激しくなり、気管支のほうまで来ているような感じだったが、これも浄化の一つだと思い、またそのままにしていた。

 時間まで、五十鈴を鳴らして瞑想、祝詞、イエス様のお祈りにセルフヒーリングと、出来ることは何でもしておいた。どうか、このプロセスがスムーズに終わりますように、それをちゃんと受け入れ、乗り越えるだけの力と勇気を与えて欲しいと・・・。それで、だんだん覚悟が出来てきた。まるで、戦場にでも行くみたいな気持ち。そのロッジに向かうのも、真っ暗な中を歩いていくので、余計にドキドキするのだ。いや、正直言って怖かった。何度も深呼吸しながら、私としては精一杯の勇気を出した。柾至は全然平気だったので、それが救いだった。

 今回は、私たちのグループだけだった。そのほうが落ち着いて臨める気がした。それに、始める前に、みんなで一緒にお祈りをしたり、トーニングもしたので、部屋のエネルギーは昨日とは違っていた。同じ場所に位置したが、今日は反対側からスタートすることになった!(うわっ)

 2番目に柾至。あの味がわかっていて飲むのは、また勇気がいる。飲み終わっても顔色一つ変えなくて、ちゃんと姿勢を正したままでいる彼を見て、我が子ながら立派だと思った。その姿に勇気づけられ、私も何とか飲み終えたが、あの味にはまだ慣れることなく、唾液が溜まってウッときそうになるのをティッシュで抑えて、何とか持ちこたえたって感じだった。(親子でこの違い・・・お恥ずかしい) 
 片手には五十鈴をしっかりと握り締めていた。(儀式のときに、五十鈴を聞きたいとのリクエストがあった) みんなが飲み終えた後、横になると5分もしない間に、例のリズムが右側からゆっくりと流れてくる。もう来たの!? 早すぎるよ〜。でも、もう抵抗は出来ない。瞬く間に、また深い異次元の世界に引きずり込まれた。

 昨日とは、また違うビジョンが現れた。キラキラした金色の世界で、眩しくて華やかだ。次々に、いろいろなものが現れて、目まぐるしく動き、まるで夜のサーカスを見ているように賑やかだった。私は、それらをうっとりと眺めて、また恍惚状態になっていた。昨日よりもさらに深く入っていた。身体が熱くなってきて、顔に汗が流れているのを感じた。拭いたいが、身体が重くて動かない。そこで、シャーマンが唄っているのが、聞こえてきた。そして、バナナの葉を振る音。目覚めかけても、その音でまた深く深く入って行く。もう十分なのに・・・と思いながら、またその世界に連れ戻されて行く。

 昨日は、上へ上へと登っていったが、今日は大地の中に身体が埋もれてしまったような感覚がした。どんどん深く沈み、身体が大地の中に溶けて行くように・・・。やがてリズムが止まり、周囲の音が聞こえてきた。どうやら、終わったようだ。五十鈴を鳴らさなければ・・・そこで持てる力を振り絞って、五十鈴を持ち上げて鳴らした。部屋中に五十鈴の音が鳴り響いた。

 柾至が起き上がってきた。「おかあさん、おかあさん、すごいよ!!」と興奮気味に話しかける。でも私は、返事をするのがやっとだった。そこで、エハンが来て、柾至の話を聞いてくれた。彼は、ハエ(!)と一体化して飛び回り、宇宙まで行って、宇宙人に会ってきたそうだ。その宇宙人たちは青い顔をしていて、唄っているときには、どんどん髪の毛が伸びていたそうだ。たくさんの星や地球も見え、すごくきれいだったと感動している。ハエの目と同じように、視界が拡がって見えたそうだ。エハンも凄いね!と喜んで聞いてくれていた。横に寝ている私に、「彼はこんな素晴らしい体験をさせてくれたこと、こんなきれいな身体に産んでくれた両親に、後できっと感謝するよ。」と言ってくれた。私もその言葉を聞いて、うれしかった・・・。

 私はその後も、また意識が遠のいてしまったが、エハンが代わりに五十鈴を鳴らしてくれたようだ。しばらくすると、みんなが動いているのがわかった。今夜は冷えるかもしれないので、早目に自分たちのロッジに帰ったほうが良いと言っている。みんなは、さっと起き上がって、部屋に戻って行く。どうして、そんなに動けるの?私は、まだ頭がグルグル回っていて、とても起き上がれないのに・・・。でも吐き気はなかった。ただ、横になっていると、また意識が遠のき、あの世界へ入って行こうとする。私は早く目覚めたくて、もうこれ以上眠らないようにと、まだ麻痺している手を何とか動かそうとした。柾至も部屋で眠ったほうが良いということで帰らせた。

 そこには、とうとう私一人になってしまった。エハンも疲れているはずなのに、液を吹きかけてくれたり、私の手をマッサージしてくれていた。今日は、まだ全然吐いていないので、もしかして吐いたら早く抜けるのかもしれないと思った。吐くために、わざと水を飲んでしまおうかとさえ思った。でも、昨日とは打って変わって、吐きたいと思っても吐き気が来ない。その分、アヤワスカが身体全身の細胞の一つ一つにまで、浸み渡っていくような感じがした。シャーマンももう帰ってしまっている。呼び戻して、何とかして欲しいとまで思った。儀式中なら、シャーマンはちゃんとケアしてくれる。でも、昨日も今日も、その間の私は心地良い世界に行っているので必要がなかったのだ。(通常、この儀式は3〜4時間で終わるらしい) 何で私だけこうなのだろう・・・。普段、薬も何も飲まなくて、アルコールにも極端に弱い私の身体には、みんなと同じ量は効き過ぎるのではと思った。早く楽になりたいために、またいろいろな思いが出てくる。(まだまだ修行が足りない私でした^^;)