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聖なるペルーの旅

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2001.9.27〜10.10


10月 4日
 
 インカトレール最終日。
昨夜は、さすがにテントの中が寒くて、ウトウトしかかってはくしゃみで目が覚めるを繰り返していた。1:00頃柾至がトイレに起きたので、一緒に外に出た。すると、雲一つない空に月が眩しく光り、その周りを光りがきれいに囲んでいるのが見えた。
 初めて目にする光景と、その美しさに圧倒されて、二人で「うわ〜、すご〜い!」と大騒ぎ♪ その声は、マーサ達のテントにまで聞こえていたらしい・・(^^; まるで空全体が、光りに包まれているようだった。 テントに戻っても、私はまだコーフン気味。そのうち、さらに気温が下がり、今度は喉が痛くなってきて、さすがに3日目なので眠れないことがきつくなってきた。結局この夜は、ほとんど眠れぬまま朝を迎えることになった。

 5:30頃、エハンが朝のサルカンタイを見に行くというので、フラフラしながらも起き上がってついて行った。朝日が昇る前にもくっきりと見えている。空には、まだ月が出ていた。昨夜のことを彼に話すと、その月を囲む光は、ルナレインボーと呼ばれているとのこと。(さすが、虹には詳しい^^) 

 私達は写真を撮ったり、瞑想をしたりして過ごしていた、そのうち朝日が昇る頃になった。「五十鈴を鳴らして、朝日を迎えよう」ということになり、山に向かって私は世界平和を祈りながら鳴らし続けた。そうして、次第に姿を見せた太陽には、また虹がかかっている。(ソーラーレインボー) それが、私には神様が姿を現したように見えたのだった。
 無意識に手を合わせていた。サルカンタイと反対側には、今日これから向かうマチュピチュの山まで見えた。ゴールに近づいた私達への祝福だろうか。太陽が光り輝いて眩しかった。このとき、私の顔はボロボロ皮が剥けていて、悲惨な状態だった。(やはり、睡眠不足はお肌の大敵なのだ) あと今日一日、どうかマチュピチュまで元気に歩けるだけの力が出ますように・・・。






 今日で、テント生活も終わり。最後の朝食は、パンケーキにメープルシロップだったので、柾至は喜んでいた。ポーターたちともお別れなので、今は恒例となった(エハン達が始めたらしく、日本人だけらしい)ポーター達へのプレゼントを渡す儀式をした。チップと一緒に、それぞれに持ち寄ったプレゼントを、出来るだけ公平に分けて、一人ずつ順番に渡していく。
 ポーターたちも民族衣装を着てくれていた。喜んでくれている彼らの姿を見て、私達もうれしかった。本当に彼らはシンプルに生きている。確かに生活は貧しいのかもしれない。でも屈託のない、純粋な笑顔には、余計な囚われや悩みがなく、心は豊かなのだと感じた。物は豊かでも、ストレスの多い社会に生きている人達と、大自然の中で毎日を精一杯生きている彼らと、どちらが幸せなのかな・・・。


 さて、マチュピチュ目指して出発。ここからは、900mを一気に下がる。下りは大丈夫。11:00頃には、1940年に発見されたウイニャワイナの遺跡に着いた。この頃には、M.Yさんも元気を取り戻していた。この遺跡には若さの泉があると言うので、みんなで勇んでいったが、今は乾期なので水は少ししか流れていなかった。(あ〜残念) 
 男性陣たちは、それでも順番に裸になって水浴びをしていたらしいが、それで時間がかかったので、私達は手足だけ浴びておいた。(暑い中、女性陣は待ちくたびれたのだ〜笑) ここでランチも終えて、一休みした後に再出発。今日は良く晴れていたので、日差しが強くて暑かった。そこからは、登ったり下ったりを繰り返し、ものすごく急斜面な石段も登って(こわかった〜)、見張り台のようなところに上がって一息ついた。そこから、マチュピチュは近いとのこと。 

 そして、とうとう太陽の門の前へ! ここで、全員が揃うのを待つ。この太陽の門の先には、マチュピチュが待っている。 とうとうここまで来たんだ〜。
 オリエンテーションのときに、エハンが話していた。観光で来る人たちは、快適な汽車に乗り、バスで下からマチュピチュへ上がって行くようになった。でも、インカの時代には、汚れている者や邪気のある者は、ここから先は入ることが出来なかったという。だからこそ、私達は聖なる山に敬意を示し、自分の身体を使って歩きながら、肉体も全て浄化した後で、この門から入る。そのことに大きな意味があるのだと言っていた。
 太陽の門が正式な入り口で表玄関だとしたら、下からバスであがってくるのは勝手口から入るようなものだと、何かに書かれていた。

 ここで、一人ずつ順番に門の前に立ち、(一人分のスペースしかない)、エハンが儀式でいつも使っていた例の聖なる液体を吹きかけて清めた後、アドリエールが手を取って連れて行ってくれる。私達は目を瞑るか、うつむいて前を見ないようにと言われていた。

 そして、全員が揃ったところで、目を開けた。私は、もうその時点で感動し、目に涙が浮かんできていて、目を開けたときには大粒の涙が溢れてきた。その丘の下には、マチュピチュの全景が広がって見えた。この時ばかりは、抑えきれなくて声をあげて泣いてしまった。(実は、これを書きながら思い出してしまって、また・・・^^;)

 ここまで来るのに、長い道のりだった。でも、こうして全員揃って元気にゴール出来たのだ。途中、苦しいときでも、いつも山の精霊たちや太陽、月が見守り、励ましてくれていた。そして、虹の祝福を受けて、ここまで来ることが出来た。マチュピチュを見下ろしながら、いろいろな思いがよぎっていた。
 

太陽の門から見たマチュピチュ

とうとう来たんだね!(右の高い山がワイナピチュ)

イエス様の祝福を受ける柾至

太陽の門を降りて、マチュピチュの遺跡へ

 柾至は、早くマチュピチュに降りたいらしく、また急いで駆け下りて行った。私達がクスコに着いたときに、聞いていたことがあった。まだ到着する前に、アドリエールに今回のツアーについてリーディングをしてもらっていたそうだ。
 そのときに、小さな1枚のコカの葉が飛び出したことから、グループの中に一人子供がいるのではと言われ、その子供が先頭に立って、元気にゴールしている様子が出ていると言っていた。そのメッセージを聞いて、みんなは彼が来てすぐに熱を出していたこともあって、別の人のことではないかと思っていたそうだ。でもそれが、最後にはそのメッセージの通りになったのだ。

 エハン達も、このインカトレールを制覇した子供は、彼が初めてかもしれないと言っていた。確かに、このトレール中は、(たまたまかもしれないが)現地以外の子供はもちろん、日本人にも出会わなかった。いち早く広場に着いた柾至は、ラマの近くで遊んでいた。ホテルに向かうバスを待っている間、振り出した雨の中、みんなで祝杯をあげた! 

 アグエスカリエンテスの町は、今までとはガラリと変わり、日本で言えばペンション村みたいに、可愛い造りのお店や、露店のお土産屋さんがズラリ。でも、それよりも何よりも、ヘトヘトの私は早くホテルの部屋に入りたかった。また、そのホテルの素敵なこと。川の流れる音に、鳥の鳴き声。木や植物でいっぱいの庭も良く手入れされていて、まるでジャングルの中の楽園って感じ。部屋に入って、シャワーに突入! やっとスッキリ。

 そして、夜は食事の前に温泉へ。どれだけ、この時を待っていたことか。それが、そこから温泉までは、まだあと20分は歩かなければいけなかった・・・。温泉への最後の坂道では、K.Mさんの腕につかまなければならないほど、私は疲れていた。

 この温泉は、シャーリーの本で世界的に有名になったところ。水着に着替えて、外に出ると寒くてブルブル。プールになっている温泉に、飛び込むように入る。温度は、かなりぬるめ。でも、立ったまま首まで入れる。地面は、土なので気持ちが良い。
 たくさんの人で、音楽もかかって賑やかだ。ビールや飲み物を片手に、パーティー気分で楽しんでいる。ここで、私たちはまた乾杯! 足をもみほぐしたりしながら、疲れた身体を癒していた。エハンとマーサが、カナダで教わったという水中でのワークをしてくれた。仰向けに浮かべて、頭と腰の辺りを支えてもらいながら、水の中を漂わせてくれる。ほどよい温かさの水に包まれて、まるで母体の羊水の中に浮かんでいるようだった。そこでまた瞑想状態になった。

 1時間近く入って出ると、後から身体がポカポカしてきた。通りには、たくさんのレストランやバーが並んでいた。私たちは、賑わっているほうのお店に入ろうとしたのだが、そこでエハンが隣のわざと空いているほうのお店にしようと言った。後になって、それも偶然ではなかったことがわかった。食事をしていると、今度は民族衣装を着たハープ奏者のおじさんが入ってきた。中でもK.Mさんは、特に気に入っていたみたいで、「いいなあ〜♪、いいなあ〜」の連発で、その演奏に酔いしれていた。

 私は、この時にはすでにウトウトしていた。他のテーブルには、素敵な老夫婦がいた。二人で、世界各地を旅行しているらしく、エハンとも話が弾んでいたようで、そこでエハンは凄い情報をもらったとエキサイトしていた。ようやくホテルの部屋に戻ったときは、ヘナヘナともう動けないくらいになっていた。それもそのはず、熱が出ていることにようやく気づいた。インカトレールが終わって、緊張感が取れたからか、ここ数日間の身体の疲れが一気に出てきたようだった。
 そう言えば、キャンプ中は睡眠も十分取っていなかった。明日は、予定ではワイナピチュを登ることになっていた。でもエハンは、みんなここまで良く頑張って来たので、疲れも出ているだろうから、明日はもう無理はしなくて、マチュピチュでは自由行動にして、ワイナピチュは希望者だけにしようと言っていた。それでも、せっかくここまで来たのだから、最後のワイナピチュは出来ることなら登りたい・・・。
 頂上には、月の神殿も待っている。明日の朝までに、この熱が下がるようにと、願いながらベッドに入った。